薬事法に替る薬機法、化粧品や雑貨の扱いはどう変わる?

薬や化粧品に関する「薬事法」という法律を聞いたことはあるでしょうか? 実はこの法律、2014年に改正され、法律名が「薬機法」へと改められています。化粧品を販売するなら必ず押さえておくべき法律であり、特に「化粧品」「医薬部外品」「雑化」の違いはしっかりと理解しておく必要があります。

この3点の違いを主に薬機法について詳しく見てみましょう。

薬事法の相談はどこにすべき?企業の窓口を紹介!

薬機法とは?

薬機法は、正式名称を「医薬品、医薬機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言います。医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品に関する法律で、その品質と有効性、安全性を確保するための非常に重要な法律です。

医者や医療スタッフ、薬剤師として働く人達に関係する法律であるのはもちろんですが、化粧品が対象に入っていることから、美容業界で働く人にも深く関わってくる法律です。薬機法では「化粧品」だけではなく「薬用化粧品」や「雑品」といった化粧品に類似するものも関係してくる上、それぞれ広告表現についても違いがあるのです。

薬機法における化粧品とは?

「化粧品」と聞くと、ファンデーションや口紅のようなメイクアップ用品を思い浮かべる人が多いでしょう。薬機法ではこの「化粧品」について、2条3項にて定義がされています。まず化粧品の目的は「人の身体を清潔にするもの」「人の身体を美化し、魅力を増し、容貌を変えるもの」「人の皮膚、毛髪を健やかに保つもの」です。

「人の体を清潔にするもの」は、石鹸や歯磨き粉、シャンプーなどが挙げられます。「人の身体を美化し、魅力を増し、容貌を変えるもの」はファンデーションや口紅などのコスメ用品の他、香水なども含まれます。そして「人の皮膚、毛髪を健やかに保つもの」は、化粧水や乳液、ヘアオイルなどが例として挙げられます。

一般的に「化粧品」と呼ぶアイテムよりも、薬機法では幅広い物が「化粧品」として扱われているのです。薬機法では、「化粧品」の定義として「髪、顔、肌に塗る、つける、その他これらに類似する方法」で使用し、「人体に対する作用が緩和なもの」という条件が付いている点にも注意が必要です。

「飲む美容液」などの商品名で美容ドリンクなどが売られていたりしますが、これらは商品名こそ「美容液」で「化粧品」であるものの、薬機法上の「化粧品」には当たりません。また、「人体に対する作用が緩和なもの」の具体的な効能効果も、厚生労働省によって56項目定められています。

化粧品を広告するときは、この56項目を守らなければなりません。

「薬用化粧品」って一体なに?

化粧品には「薬用化粧品」という種類がありますが、薬機法ではこの二つは別物であり、薬用化粧品は「医薬部外品」の一種として定義されています。薬用化粧品は、肌荒れやニキビを防ぐ、デオドラント効果を持つ、フケやかゆみを防ぐといった効果をもつ「有効成分」が配合されていて、この一点が化粧品との大きな違いとなっています。

薬用化粧品は、化粧品の効能効果に加え、承認の取れた薬用化粧品としての効能効果を広告に出すことができます。承認が認められる内容は細かく定められているため、しっかり確認することが必要です。

薬機法における雑品とは?

薬機法における「化粧品」「医薬部外品」「医薬品」「医療機器」に該当しないが、化粧品使用や美容行為のために使うものを「雑貨」あるいは「雑品」と呼びます。「化粧品雑貨工業品」という呼び方をすることもあります。

「化粧品でも医薬部外品でもないもの」とよく言われますが、雑貨に特に定義はなく、業界によって指すものが異なることも多いです。具体的には化粧水を肌に付けるためのコットンや、パウダーを肌に乗せるための化粧ブラシなどが挙げられます。

雑品について考えるとき、時折「肌に直接付けないなら雑品」と捉える人がいますが、この考えは避けた方がいいでしょう。むしろ化粧ブラシやあぶらとり紙、お手入れマスクなど、肌に直接触れる製品も多いからです。より扱いが慎重になるから良いのでは、と思うかもしれませんが、この考え違いが問題になることがあります。

それが商品表示です。雑品であるにも関わらず化粧品や医薬部外品のような表示を行うと、医薬部外品に必要な認可や承認を取得していないにも関わらず、あたかもそれら取得し国に認められた安全性の高い製品であるような誤解を消費者に与えることになります。

こうした誤解はかえって消費者の信頼を損ねますし、その品目が属する業界ルールにひっかかる可能性もあります。雑品を考えるとき、難しいのが美顔器などの美容機器です。そもそも、疾病の診断や治療、予防に使用される、あるいは身体の構造や機能に影響を与えることを目的とする機器は「医療機器」と呼ばれます。

病院などで使用されているものは間違いなく「医療機器」ですが、一般家庭で使用する程度のものであればその効果はかなり低く設定されていることが多いため、「医療機器」でなく「雑品」の扱いになることがほとんどです。

家電製品の場合は「美容家電」と呼ばれることになります。雑品は薬機法上では扱われないため、化粧品や薬用化粧品を扱うときのような届出や承認は不要です。ただし、薬機法の対象外といっても、薬機法に抵触するような広告を出すことはできません。

化粧品の広告に関する注意点

化粧品を販売するときは、特に「誇大広告等に関する規制」に注意する必要があります。誇大広告とは、勘違いを招くような大袈裟な謳い文句、虚偽を含んだ内容を広告、記述、または流布することで、一般消費者が目的に合せて化粧品を購入できるよう、薬機法ではこの誇大広告に関する規制が定められています。

化粧品に関する誇大広告で多いのが「製造方法に関するもの」「成分・原材料に関するもの」「効能・効果に関するもの」です。「製造法に関するもの」は、実際の製造方法と異なる表現や、その優秀性について事実と異なる誤解をさせてしまうような表現のことで「最先端の製造方法」「近代科学の粋を集めた」などが一例です。

「成分・原材料に関するもの」についても、やはり誤解させるような表示は規制されています。何が無添加なのか示されていない「無添加」表示などはその代表例です。また、薬機法に基づく承認等の範囲を超えることももちろん禁止されています。

「効能・効果に関するもの」も同様で、具体的な効能や効果を提示し、それが確実であるように表示することは禁止されています。「これさえあれば」「安全性は確認済み」などは、不適切表示の一例です。

法律に関する正確な知識を身につけよう

化粧品に関する広告を行うときは、薬機法の規制を必ず守らなければなりません。特に誇大広告は、商品を売り込もうとやってしまいがちですが、違反すると刑事罰や課徴金納付命令の対象になることがあります。まずは化粧品、薬用化粧品、雑品が薬機法でどのように扱われているのか確認し、その上でやってはいけないことを理解するようにしましょう。